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上智大学

大学院地球環境学研究科 教授 藤井良広氏

プロフィール

大阪市立大学経済学部卒。日本経済新聞社入社、ロンドン駐在、経済部編集委員等を経て、2006年に上智大学教授に就任。環境金融論、CSR経営論、EU環境政策論等を担当するとともに、環境省、内閣府等の審議会、研究会に所属、環境を中心に幅広く発言、執筆を続けている。主な著書・編著に「進化する金融機関の環境リスク戦略」(金融財政事情研究会)、「カーボン債務の理論と実務」「環境債務の実務」(ともに中央経済社)、「金融NPO」「金融で読み解く地球環境」(ともに岩波書店)、「縛られた金融政策」(日本経済新聞社)等。

芙蓉総合リースは、「本業のリース事業を通じた社会貢献」「3Rの推進による循環型社会構築への貢献」を、同社のCSR戦略の二本柱としています。前年も指摘しましたが、本業と社会の「共通価値」を踏まえた経営方針こそが、企業価値の持続的な向上につながります。その意味で、同社の経営視点は定まっていると評価できます。

同社がこうした経営方針を展開するうえで有利な点は、本業のリース事業そのものの時代性が背景にあると思います。エネルギーや地球温暖化、食糧・水資源、人口増など、今日われわれが直面しているいくつものグローバル課題は、等しく資源問題という点で共通しています。資源の過剰使用、資源制約、資源の偏在等、従来のモノの所有にもとづく無制限な資源消費の時代から、我々の地球は明らかに「限られた時代」に移っています。

限られた資源を所有価値ではなく、使用価値を最大限に発揮させて活用する。さらに、使用価値が減じた資源は、再利用・リサイクル・再販売のサイクルに乗せて、市場に再び還流させる。リース業はそうした循環をつなぐファイナンスの機能を提供するわけですから、モノの使用力と、金融力を統合したビジネス・ソリューションを最適に提供できる立場に立っているのです。

つまり「本業イコールCSR」の側面が、同社の事業展開の随所に存在しています。たとえば、今回の報告書でも紹介されているLED照明リースは、電力需給逼迫の長期化が見込まれる中で、社会に必要な「明かり」を効率的に提供する一つの回答であると同時に、収益性の高い市場の拡大が見込まれます。東京電力福島第一原子力発電所事故の中から、急遽、需要が生まれた原発労働者向け建物リースのノウハウは、おそらくグローバル商品として展開できると予想します。

新しいリース商品だけではありません。伝統的な機械や自動車、航空機などの市場も、前述の資源制約の中で、所有から使用へのシフトが加速しています。「『前例のない場所』を目指す」というトップメッセージは、そうした手応えから発せられるように聞こえます。ただ、企業として順風であるということは、その分、他社より、経済的、社会的両面の期待が高いことも忘れてはなりません。

同社の報告書は、紙媒体とウェブ版との切り分けの点で、他社に比べてスマートであり、ステークホルダーとの双方向コミュニケーション(アンケート)を踏まえた報告書づくりのコンセプトも、わかりやすい。だが、前述したリース業に求められる時代的要請への答えとしては、いささか物足りない。というのは、多くのステークホルダーの意識がまだ十分に「使用」への切り替えが進んでおらず、その分、リース業への評価も「わかる人だけがわかる」レベルから脱していないように思えるからです。投資家を含む社会のステークホルダーに、リースの価値を、同社の価値を、もっと啓蒙する責務を負っているといえます。それ自体が事業拡大に直結する責務でもあります。

リース業の枠を越えた責務もあります。同社は、金融業の中では率先して環境会計を開示してきました。しかし、直近の企業価値開示の国際的な議論の流れは、財務会計、環境会計という仕分けではなく、企業の財務価値と環境・社会価値を統合化する方向に動いています。新たな「統合会計」というフレームワークづくりです。今はまだ、「言うは易く、統合は難し」の状況ですが、米欧の一部企業はそうした試みに取り組んでいます。

リース業が本業とCSRの親和性の高い“恵まれた事業”と考えると、同社がチャレンジする「前例のない場所」の一つは、統合報告書かもしれません。企業価値の統合化によって同社の価値はより実態に即した形でステークホルダーに理解されることになるはずだからです。日本企業の先頭に立つ気構えを期待します。

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