再生可能エネルギーの市場規模が
大きい欧州で事業ファンドに
合計100億円以上の出資を決断
再生可能エネルギー事業部 主任 種市 俊也
再生可能エネルギー事業部 主任 牧野 航
再生可能エネルギー事業部 主任 後藤 勇樹

芙蓉総合リース(以下、芙蓉リース)は、2022年度から5年間の中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」で、脱炭素の推進に累計3,000億円を投入する目標を掲げた。これは、化石燃料への依存度を低減し、再生可能エネルギーを拡大しようという世界的な機運にも合致した計画であり、すでにアメリカや台湾での太陽光発電プロジェクトにも投資したが、今般、新たに欧州における再生可能エネルギー事業にも投資し、さらに事業領域も拡大させている。中期経営計画に掲げる発電容量の目標は、1,000メガワット。まずは2つのプロジェクトに、合計100億円以上を出資する。

英国の洋上風力発電事業に参画

欧州ではすでに再生可能エネルギーの普及が進んでおり、太陽光や風力など天候で出力が変わる変動性再生可能エネルギーの比率は、各国の平均でおよそ20%を占める。さらに、ロシアのウクライナ侵攻を機に電力価格が高騰。天然ガスや石油のロシア依存が問題となり、再生可能エネルギーの重要性がいっそう高まっている。

こうした中、芙蓉リースは欧州での再生可能エネルギー事業に参画。2つのプロジェクトに対して、合計100億円以上の出資を決断した。中期経営計画で挙げたCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)の実践を通じた、社会課題の解決と経済価値の同時実現を目指す。また、世界的に先行している欧州市場で得たノウハウを、日本国内での再生可能エネルギー案件へ還元する狙いもある。

今回新たに参画したプロジェクトは2つ。その1つが、スコットランド洋上風力発電事業を対象とする投資ファンド「Equitix MA 21 LP」(以下、当ファンド)だ。2019 年に商業運転を開始した、風力発電機が84 基、総発電容量588MWの「Beatrice Offshore Windfarm(ベアトリス洋上風力発電所)」が当ファンドの出資対象となる。

「今後拡大が見込まれる洋上風力発電事業にいち早く取り組むことの重要性を考慮し、前向きな検討を開始しました。さらに、洋上風力発電事業の取り組み経験を持つ企業をアドバイザーとして起用し、知見を補いながら慎重にデューデリジェンスを進め、最終的に出資を決めました。出資後には実際に現地を訪問し、発電所の運営状況を確認することで、芙蓉リースが英国の大型国家プロジェクトに参画し、脱炭素社会の実現といった社会課題の解決を通じて、企業価値の向上に向けて進んでいることを実感しました」(種市)

本プロジェクトには事業当事者に近い立場で参画できるため、より深いノウハウを数多く取得できるはずだ。

欧州の別のファンドにも出資

芙蓉リースが参画したもう1つのプロジェクトが、ドイツのAquila Capitalグループが運営する、再生可能エネルギー事業を投資対象とする投資ファンドだ。Aquila Capitalグループは再生可能エネルギーを中心としたインフラ資産の運用・管理を行うドイツの投資・開発会社であり、世界15カ国16拠点で事業を展開し、再生可能エネルギーに関する豊富な知見や実績を有している。

今回投資したのは、Aquila Capitalグループが運用・管理する中でも、欧州の再生可能エネルギー事業を主な投資対象とするファンド。複数の国で展開する太陽光発電・風力発電・水力発電などが投資対象となる。本ファンドに参加することで、欧州各国の再生可能エネルギー事業やマーケット情報などの知見を獲得でき、Aquila Capitalグループおよび大和エナジー・インフラと連携したビジネス領域の拡大が期待できる。

ただ、契約に至るまでは苦労も多かったという。

「為替リスクへの対策や外貨の資金調達、会計・税務に関する事前調査、書類のリーガルチェックなど、検討すべきことが山積していました。そこで、社内外の関係者と連携し、リスクを入念にチェックしながら進めました。また、海外担当者との意思疎通が難しい場面もありましたが、日本語のあいまい表現は使用を控えたり、大和エナジー・インフラの支援を得たりしながら、進展を図りました」(後藤)

こうして、2022年7月に出資契約を締結。芙蓉リースとしては本ファンドへの参画を契機に、自ら事業開発もできるAquila Capitalグループと、より深い関係性を構築し、再生可能エネルギー事業のさらなる拡大を目指す方針だ。

今後も国内外の企業と連携し、再生可能エネルギー事業に参画する

今回参画した2つのプロジェクトは、同じ再生可能エネルギー事業部のメンバーが契約まで担当した。ほぼ同時期に進行していたこともあり、双方の担当者が為替リスクの対策や英文での書類作成などで、お互いの知見を共有することも多かったという。こうした相乗効果が「初めて」や「経験の少ない」ことが多かった、本プロジェクトの進行を後押ししたに違いない。

また、海外の再生可能エネルギー事業への投資経験を増やすことは、社内の人材育成につながる。プロジェクトの進行を通じて得た、言語・ネットワーク・知識など多要素の成長は、国際舞台で活躍可能な人材の育成につながるはずだ。

「今回欧州の再生可能エネルギー市場に参画し、現地の企業や関係者と新たな関係を築けました。今後も国内外の企業と連携し、新しい再生可能エネルギーのプロジェクトに参画する機会が増えることを期待しています。実際に、本件のニュースリリース発表後には、多くの問い合わせをいただきました。芙蓉リースは保守的というイメージがあったようですが、良い意味で既成のイメージを壊すことができたと思います」(牧野)

こうした経験の多少を問題とせず、臆さずに挑戦する姿勢からも本プロジェクトは、コーポレートスローガン「前例のない場所へ。」を体現した取り組みだといえるだろう。

  • 所属、肩書は取材時点