IAS16(IFRSの有形固定資産)とは

IAS16(IFRSの有形固定資産)とは?

有形固定資産は、日本基準とIFRSで大きな差がある基準の一つです。例えば、償却方法は、「経済的便益の消費の予測パターン」を反映するものとされ、日本基準でよく使われる定率法ではなく、定額法での償却となるケースが通常となっています。このように、IFRS適用に向けた検討ポイントが多いため、システムや運用の見直しを早期に行うことをお勧めします。

IAS16号の特徴

IFRSでは有形固定資産の会計処理及び開示について、IAS16で定められております。
IAS16は、1年以上の期間にわたり使用されることが予測され、商品やサービスの生産や提供、第三者への賃貸、または管理上の目的のために保有する有形固定資産に対して適用されます。

有形固定資産の当初認識後の測定には「原価モデル」と「再評価モデル」の2つがあります。

原価モデルは取得原価-減価償却累計額及び減損損失累計額=帳簿価額です。
再評価モデルは再評価日、現在の構公正価値-減価償却累計額及び減損損失累計額=帳簿価額です。(信頼性をもって公正価値を測定できる有形固定資産項目についてのみ選択可能)

一般的には原価モデルが使われており、税法に依拠する部分の多い日本基準と異なり体系的に規定されています。

取得原価

有形固定資産項目は当初認識時に、以下の構成要素からなる取得原価で測定します。

  • 購入価格(取得価格、値引きや割戻しは控除、輸入関税や還付されない取得税も含む)
  • 直接起因コスト(搬入コスト、専門家報酬、資産の建設に直接従事した従業員給与等)
  • 資産除去コスト(その資産の解体/除去、原状回復に必要なコストの当初見積額)
  • (借入コスト、大規模な検査等のコストが加算されるケースもあり)

減価償却単位

減価償却は、取得原価の総額に対して重要性のある構成部分ごとに個別に実施します。
この考え方を「コンポーネント・アカウンティング」といいます。
例えば航空機の場合、機体、エンジン、大規模な定期検査、座席などの客室部分、その他の部分といった構成要素に区分し、それぞれの耐用年数にわたって減価償却を行うことが考えられます。

耐用年数

耐用年数とは次のいずれかをいいます。

  • 資産が企業によって利用可能であると予想される期間
  • 企業が当該資産から得られると予想される生産高又はこれに類似する単位数

耐用年数の決定にあたっては、下記の要因を全て考慮する必要があります。

  • 資産の予測される使用量
  • 予測される物理的自然減耗
  • 生産技術の変化もしくは向上、または当該資産によって製造される製品もしくは提供される役務に対する市場重要の変化から生ずる技術的または経済的陳腐化
  • 資産の使用に対する法的または類似の制約

減価償却方法

減価償却方法は、「定額法」、「定率法」、「生産高比例法」などがあり、将来の経済的便益の予測消費パターンを最も近く反映する方法を選択することになります。

減損損失

資産の帳簿価額が、使用または売却によって回収される金額を超える場合(回収可能価額を超える価額で計上されている場合)、資産が減損しているものとされ、当該資産の帳簿価額をその回収可能価額まで減額(減損損失を計上)しなければなりません。
のれん以外の資産について過年度に認識された減損損失は、報告日ごとにもはや存在しないか、もしくは減少しているかを評価し、存在しないか減少している場合は減損損失の戻入れを行います。

期末の見直し

資産の残存価額、耐用年数、減価償却方法は各事業年度末に再検討を行い、予測が以前の見積りと異なる場合には、実態を反映するように会計処理を変更しなければなりません。

開示

有形固定資産の種類ごとに下記事項の開示が要求されています。

  • 減価償却累計額控除前帳簿価額を決定するために用いられた測定基礎
  • 採用した減価償却方法
  • 採用した耐用年数または減価償却率
  • 期首、期末の減価償却累計額控除前帳簿価額および減価償却累計額(減損損失累計額と合算)
  • 期首および期末の帳簿価額の調整表
  • 報告期間中の減価償却額

リース

リースについては、IFRS16に規定されており、基本的にすべてのリースが使用権資産としてオンバランスが必要です。

日本基準との違い

項目

IFRS

日本基準

取得原価

借入コスト、大規模な検査等のコストを加算するケースもあり

左記規定なし

減価償却方法

税法に基づく償却方法は通常使えない、将来の経済的便益の消費パターンを反映する方法を採用する
(定額法、定率法、生産高比例法など)

税法に基づく償却方法を採用することが可能
(一般的には定率法を採用する企業が多い)

耐用年数

無条件での税法上の法定耐用年数の採用はできない、実態に則した経済的耐用年数を採用する

税法上の法定耐用年数の採用が認められている

減損損失

帳簿価額と回収可能価額とを比較する1ステップ方式を採用、減損の戻し入れあり

割引前将来キャッシュフローが帳簿価額を下回る場合にのみ認識、帳簿価額と回収可能価額を比較して測定する2ステップ方式を採用、減損の戻し入れ規定なし

期末の見直し

各年度末に残存価額、耐用年数、減価償却方法の見直しを行う

左記規定なし

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