借地情報取得から京都でのホテル
建設まで、プロジェクトを主導的に
推進
不動産リース営業第二部 主任 厚東 治
京都支店 荒井 拓弥

親密アライアンス先から京都・烏丸御池の借地情報を取得した芙蓉総合リース(以下、芙蓉リース)は、当該土地の最有効な土地活用方法として、外国人観光客の増加に対応するハイスペックホテルの建設を地主様に提案。オペレーターに三菱地所グループの株式会社ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ様(以下、RPHS様)、設計・施工会社に大手ゼネコン様を選定し、安定した収益スキームを構築するなど、ホテル開発プロジェクトを自ら推進し、今般開業に至りました。

長期間安定的に地代収入を得られる仕組みを、地主様が希望していた

――どのような経緯で、この案件はスタートしたのでしょうか?

荒井 芙蓉リースでは、お客様との信頼関係の構築を大切にしています。それが結実して、2015年に京都支店が不動産情報室と連携し、対象地の地主様の借地情報を親密アライアンス先から入手できたことが、この案件の発端となりました。対象地というのは、京都市営地下鉄の烏丸線・東西線の2路線が乗り入れる烏丸御池駅から非常に近く、観光にもビジネスにも便利な場所です。しかも、南側が御池通に面する角地で、祇園祭でおこなわれる山鉾巡行のゴール地点に近いという好立地でした。

厚東 観光立国実現に向けたさまざまな取り組みによって訪日観光客が年々増加し、各メディアで「インバウンド」という言葉が使われ始めた頃でした。観光資源が豊富で、国内外から非常に人気の高い京都ですが、当時は外国人観光客の増加に対応するハイスペックなホテルはまだ少なく、ホテルの需要が高まっている時期でもありました。

――地主様からは、どのようなご要望があったのでしょうか?

荒井 地主様のご要望は、もしホテルにするなら「ブランドイメージの高いハイグレードなもの」「信頼できるパートナーとの安定したスキーム」「長期間、安定した地代収入を得る仕組み」という3点でした。
芙蓉リースは地主様のご要望を踏まえて、好立地に相応しいハイグレードホテル開発を提案の中心にすることで具体的計画立案準備に着手しました。慎重に検討した結果、ホテルオペレーターには三菱地所グループのRPHS様を、設計・施工会社はRPHS様のホテル開発実績が複数ある大手ゼネコン様を、それぞれ選定しました。
そして、芙蓉リースが地主様から土地をお借りしてホテルを建設。芙蓉リースがホテルの建物をRPHS様に賃貸。芙蓉リースから地主様に地代を支払うスキームを作成しました。このスキームを地主様へ繰り返し丁寧にプレゼンテーションを実施し、信頼関係の構築に努めた結果、数社の提案の中から芙蓉リースの提案を採用していただきました。

数多くの変更にも柔軟に対応し、7年以上も案件を主導的に推進

――ホテルの開発時には、どのような苦労がありましたか?

厚東 プロジェクトの開始当初は、2020年夏の東京オリンピックによるインバウンド観光客増加に開業を合わせることが目的の1つでした。しかし、途中でコロナ禍発生等事業環境が大きく変化し、ホテルのプランや仕様は、数え切れないほどの変更が必要となりました。
特に京都市内にホテルが次々と開業し、より一層の差別化を図るために、室数を当初の180室以上という計画から125室に減らして、1部屋あたりの面積を広くしました。こうしたプランの見直しのたびに経済条件を検証し、各関係者の希望する経済条件に収める努力が必要でした。
結果的に本案件は、開始から7年以上の年月がかかりましたが、ようやく竣工日を迎えました。環境が変化する中で、地主様・RPHS様・設計施工会社様ほか関係各社との揺るぎない信頼関係がベースとなり、乗り越えることができたのだと思います。いただいた要望も可能な限りでお応えすることができ、竣工にあたって地主様からも高い評価をいただきました。

――どのようなホテルが完成するのか、概要を教えてください。

荒井 ホテルブランドは、RPHS様の「THE シリーズ」の中でもフラッグシップラインの「アイコニック」に決まりました。正式名称は「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 京都」です。2022年4月1日の開業を予定しています。
御池通に面している2階部分には客室は設けずテラスやラウンジとして宿泊者に開放、祇園祭の山鉾巡行の際には山鉾を同じ高さから見ることができる貴重なロケーションです。また、マインドフルネスを気軽に体験いただけるメディテーション(瞑想)ルームと旅の疲れを癒やしていただける大浴場を設けました。
レストランはミシュランシェフ・原田慎次氏が手がけるイタリア料理「シンクロニア ディ シンジハラダ」、また世界で最も注目されているパティシエの一人、青木定治氏が手がけるパティスリー「サダハル・アオキ・パリ」が、それぞれホテル1Fに関西初出店します。
休息やリフレッシュはもちろん、非日常体験の提供などで満足度を高め、選ばれ続けるホテルを目指しています。

――芙蓉リースにとって、この案件はどのような意義がありましたか?

厚東 芙蓉リースが親密アライアンス先から借地情報を入手し、オペレーターや設計施工会社を選定、さらに施主となり、開発および事業リスクを一部負担し、建設したホテル建物は長期間にわたって継続保有します。このように芙蓉リースが主導的な立場で開発案件を推進するのは本件が契約第一号です。まさにコーポレートスローガンである「前例のない場所へ」を体現するような取り組みであり、苦労が絶えなかったと先輩方から聞いています。
しかし、苦労の末に第一号案件が成約できたことで、経験・ノウハウが社内に共有され、その後は芙蓉リースによる「主導型案件」が複数成約に至っています。 7年の間に、当社の不動産部門の担当者、京都支店の担当者 は、それぞれ3代目に替わっています。竣工時の担当である私たち2人は、多くの先輩方の苦労を忘れることなく、この貴重な経験とノウハウを後輩たちに引き継ぎ、芙蓉リースの財産とすることが使命だと感じています

――今後の展開に関しては、どのようにお考えでしょうか?

荒井 ホテルの竣工・開業は、芙蓉リースのゴールではありません。私たちの建物リースという業務は、ここから本格的にスタートします。今後も長期間にわたってホテル建物の価値を維持し、ご利用いただくお客様から末永く愛されるホテルにするべく、建物所有者として努めてまいります。
事業環境の変化が激しく、お客様のニーズも多様化していますが、真摯に耳を傾けることで芙蓉リースとして対応できる領域を広げ、今まで以上にお客様および地域社会に貢献できるよう注力してまいりたいと考えています。

  • 所属、肩書は取材時点