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CSVを根幹とした経営により国内外で事業領域を拡大 社会価値と企業価値の実現を両立し、持続可能な成長を図る

取締役会長 辻田 泰徳(インタビュー時は代表取締役社長)

中期経営計画を振り返って

芙蓉リースグループの5カ年の中期経営計画「Frontier Expansion 2021」は今年で5年目、つまり最終年度を迎えました。

この中期経営計画期間中、私は、一般的に低位安定と言われてきたリース業界でも持続的に成長できることを示したい、という強い思いで経営を行ってまいりました。そのため、伝統的なファイナンス・リースからオペレーティング・リースに力点を移す「脱ファイナンス・リース」を明確に意識するとともに、再生可能エネルギー発電事業やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に代表されるような「脱金融」に向けた取り組みを「戦略分野」と位置付けて推進してきました。ここ数年は概ね年率10%で成長し続けていますので、当社グループの経営戦略が持続的に成長可能なビジネスモデルであることを示すことができたと考えています。

過去7年間における主要指標の変化 [2014年3月期]営業資産残高:1兆5,992億円 経常利益:254億円 ROA:1.64% → [前中期経営計画 「Value Creation 300」(2014年度~2016年度)] → [2017年3月期]営業資産残高:2兆474億円 経常利益:314億円 ROA:1.60% → [中期経営計画 「Frontier Expansion 2021」(2017年度~2021年度)] → [2021年3月期]営業資産残高:2兆5,559億円 経常利益:480億円 ROA:1.94%

そしてこの成長を支えたのが、事業領域を4象限に区分して管理し選択と集中を進める、ゾーンマネジメント(以下図を参照)の考え方に基づいた事業ポートフォリオ運営です。

従来型のリース・ファイナンス事業を「コア分野」としてパフォーマンスゾーンに置き安定的な収益を確保しつつ、「不動産」「医療・福祉」「エネルギー・環境」などの各分野を「戦略分野」としてトランスフォーメーションゾーンに位置付けて経営資源を集中し、事業拡大を進めてきました。この4年間で「戦略分野」は順調に成長し、一方「コア分野」もポートフォリオの入れ替えや徹底した経費削減を通じて利回りを大きく向上させることができました。また、「新領域」の分野においても、今後の成長の一翼を担うことが期待できるベンチャー企業に有益な投資ができたと考えています。

こうした取り組みが実績に結び付いたことで、営業資産残高については目標を前倒しで達成し2兆5,559億円となり、経常利益も計画スタート時の314億円から480億円へと大幅な成長を実現しました。

Frontier Expansion 2021 [インキュベーションゾーン(新規事業を育む)] 支援型投資・破壊的イノベーション フロンティア:新領域・Ex:研究開発型ベンチャーへの出資 (投資回収期間:3~5年) [トランスフォーメーションゾーン(新規事業を拡大する)] 収益パフォーマンス・破壊的イノベーション 戦略分野:エネルギー・環境/医療・福祉/新領域 モノ価値→サーキュラー・エコノミー 事業価値/海外/BPO/航空機/不動産/モビリティビジネス (投資回収期間:2~3年) 社会課題の解決を通じた事業の成長 CSV(Creating Shared Value) [パフォーマンスゾーン(既存事業で成果を出す)] 持続的イノベーション・収益パフォーマンス グループ:コア分野(国内コーポレート・ベンダーリース・ファイナンス) (投資回収期間:毎年) [プロダクティビティゾーン(生産性を上げる)] 持続的イノベーション・支援型投資 コーポレート部門 参考著書:ジェフリー・ムーア「ゾーンマネジメント:破壊的変化の中で生き残る策と手順」(栗原潔訳)

目指すべきCSVについて徹底的に議論

この成長を次期中期経営計画に向けて持続し、さらに向上させていくことが今後の大きな課題です。当社グループには「前例のない場所へ。」というコーポレートスローガンがあり、これがこれまでの成長の原動力となったと考えていますが、一方で目指す場所は何処でも良いわけではなく、そこには「哲学」がどうしても欠かせないという思いがずっとありました。また、SDGs、ESGといった社会からの要請や課題が存在感を増す中で、私たちの価値創造のあり方を社員が共有するとともに、ステークホルダーの皆様にもわかりやすく伝える必要があると考えておりました。

ESGは社会・ステークホルダーの目線が強く、SDGsはそれだけでは事業性に欠けるように感じています。そこで、当社グループではその2つを繋ぐものとしてCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)を位置付け、企業価値(利益)と社会価値(課題解決)を持続的に生み出すための体制(人材、組織、ガバナンス)を構築することが重要であると考えています。このことは、中長期的には「より良い社会を目指すシステムの一員になる」ということに繋がります。

私は、企業がサステナブルに成長し、より良い社会の実現に向けて課題を解決し続けることが、ステークホルダーへの貢献になると考えています。これからも取引先、事業パートナー、社員、投資家の皆様の期待に応え続けていきたいと思います。

[ESG Environment/Social/Governance]社会・ステークホルダーの目線 → [CSV Creating Shared Value]本業を通じて社会価値を同時に実現し、サステナブルに成長している良き社会を目指すシステムの一員として社会的課題の良き解決の担い手になる 企業の価値創造活動 企業価値の実現=企業利益 社会価値の実現=課題解決 持続的に価値を生み出すため必要な人材、組織、ガバナンスなど体制の構築 → [SDGs Sustainable Development Goals]

CSVの実践を支える人材と組織の強化

持続的に価値を生み出すための究極の手段は、経営そのものの根幹にこうした一連の考え方をビルトインすることです。当社グループの事業領域は徐々に広がっていますが、将来の事業領域について議論していくためには、当社グループにとってのCSVを従業員一人ひとりがしっかりと理解することが不可欠です。そこで2020年度は、全従業員を対象とした研修とワークショップを実施しました。さらに、当社グループのサステナビリティに係る戦略や方針を策定・推進する組織として、2020年10月には「CSV推進委員会」を設置しました。今後は財務目標と同様に非財務目標についても経営陣が責任を持って進めてまいります。

また、当社グループの価値創造については取締役会でも積極的に議論しており、次期中期経営計画の策定にあたっても、様々な見地よりご意見をいただく予定です。

事業を通じた社会課題解決への貢献

当社グループは気候変動問題や医療・福祉の充実、企業の生産性向上といった社会課題の解決に繋がる事業に対し、経営資源を集中的に投下しています。

気候変動問題への対応では、企業に対しても温室効果ガスの削減が求められています。当社グループは、RE100に加盟するとともに、事業活動で消費する電力を2050年までに100%再生可能エネルギーに転換することを目標に掲げてきましたが、今般、この目標を2030年に前倒しすることを決定いたしました。また、電力の再エネ化とともにCO2全体の削減にも取り組み、グループベースでのカーボンニュートラルの実現も同時に達成したいと考えています。

お客様へのサービスでは、企業の脱炭素化の動きを先取りし提供を開始した「グリーン電力供給サービス(PPAサービス)※1」が順調に売上を伸ばしています。今後はオンサイトPPA※2だけでなくオフサイトPPA※3も増えてくるでしょう。また、2020年10月から提供を開始した「芙蓉 ゼロカーボンシティ・サポートプログラム」は、約半年間で利用団体が100団体を突破し、脱炭素化に向けたお客様のニーズは非常に高いと実感しています。

一方、昨年からは海外においてもエネルギー・環境事業を積極的に展開しています。アジアでは台湾の太陽光発電ファンドに出資を行ったほか、シャープグループとともにタイでエネルギーソリューション会社を設立しました。また、米国テキサス州の太陽光発電事業にもENEOS株式会社と共同で参画しました。

持続可能な世界を構築するためにはサーキュラー・エコノミー※4への取り組みも同様に不可欠です。当社グループは従来から3R※5を推進してきましたが、取り組みの次元を一層高めるべく、国内金融機関として初めて国際的な推進団体であるエレン・マッカーサー財団に加盟しました。すでにメンバーとの情報交換のほか、いくつかの企業とは協業も展望した具体的な議論を行っています。私たちリース会社は、サーキュラー・エコノミーにおいて、製品の生産・販売を担う動脈側と、使用後の製品を再生・再利用する静脈側の企業とを繋ぐ結節点になりうるという意味で大きな可能性を感じています。

医療・福祉事業においては、コロナ禍で非対面・非接触のニーズが高まる中、医療機関の資金繰りを支援する診療・介護報酬債権早期支払サービス「FPSメディカル」をオンライン手続きでご利用いただける専用Webサイト「Medicare in」を開設しました。今後は利便性をさらに高めるため、グループ各社が有する医療機器やサービスを一元的に提供できる共通プラットフォームの開発を計画しています。

また、企業の生産性向上を支援するBPO事業の利益規模は全体の1割を超え、グループの柱の一つとして成長を続けています。コロナ禍を経て、企業の業務効率化や働き方改革が加速することが予想されますが、RPA※6の活用や、川上から川下までワンセットでの効率化など、時宜を得た提案を強化してまいります。

サステナブルな企業成長の実現に向けて

2021年度3月期実績は、売上高7,403億円(前期比+3.9%)、経常利益480億円(前期比+9.0%)を達成し、配当は前期比35円増配の240円、配当性向は24.3%となりました。2022年3月期は、配当は20円増配の260円、配当性向は25.2%と予想しています。

今回のコロナ禍では激しい環境変化の中でも大きな影響を受けず、順調な業績を残すことができました。想定を超えた出来事が毎年のように起こっており、これまでのように未来に向かって真っすぐ進んでいくような経営だけでは対応できなくなると考えています。常に仮説を立て行動・検証し、必要があれば修正するというサイクルを回し続けることが重要だと認識しています。

今後もサステナブルに成長を続け、同時により良い社会の実現に向けた価値提供を行ってまいります。ぜひご期待ください。

  • ※1
    グリーン電力供給サービス(PPAサービス):お客様の施設屋根などに太陽光発電システムを設置して直接エネルギーを提供する事業。
  • ※2
    オンサイトPPA:オンサイト型コーポレートPPAの略。発電事業者が発電設備の設置と運用・保守を実施、現地(オンサイト)で発電した電力を需要家に供給するもの。
  • ※3
    オフサイトPPA:オフサイト型コーポレートPPAの略。企業などの敷地外に再生可能エネルギー発電設備を建設し、送配電ネットワークを経由して電力を供給するもの。
  • ※4
    サーキュラー・エコノミー:循環型経済。従来の「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」というリニア(直線)型経済システムの中で活用されることなく「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みのこと。
  • ※5
    3R:リデュース(廃棄物の発生抑制)、リユース(再利用)、リサイクル(再資源化)。
  • ※6
    RPA:Robotic Process Automationの略語。人間がコンピューター上で行っている定型作業を、ロボットで自動化すること。