代表取締役社長 織田 寛明
顧客課題を解決し続ける。その積み重ねが、CSV経営の再現性になる
芙蓉リースグループは、中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」において、CSV(Creating Shared Value)を経営の根幹に据え、事業ポートフォリオ変革とゾーンマネジメントを推進してきました。計画の最終年度を迎えた今、私は、当社グループのCSVはもう理念にとどまらず、お客さまの課題の解決を通じて信頼を獲得し、社会価値と経済価値を生み出す価値創造モデルになってきていると感じています。お客さまの課題が深まるほど、私たちに求められる役割は広がり、その期待に応え続けることが、次の成長と企業価値向上につながると考えています。
1. 中期経営計画を振り返って ―CSVを“自分ごと”と捉える組織へ
中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」の4年間を振り返ると、再生可能エネルギー事業では、海外案件における損失計上という反省もありましたが、全体としては戦略面で着実に進化してきたと感じています。特にこの間に、芙蓉リースグループならではの価値創造の土台が、ようやく会社の中に根づいてきたと感じています。その中でも大きかったのは、CSVに対する社員の理解が深まったことです。当初、CSVという言葉がすんなり浸透したわけではありません。社会課題を解決し、経済価値も同時に創出するという考え方は重要ですが、現場にとっては少し距離のあるものにも映りました。そこで私は、CSVをもっと日々の仕事に引き寄せて伝えてきました。すなわち、「お客さまの経営課題を解決することが、結果として社会課題の解決につながり、同時に当社グループのビジネスにもなる」ということです。社会課題を大上段に掲げるのではなく、まず向き合うべきはお客さまの課題である。この考え方が、営業部門だけでなく、営業を支える部門やグループ会社にも広がり、自分たちの仕事がお客さまの課題解決につながっているという感覚が浸透してきました。CSVを理念で終わらせず、行動や判断の基準として具体的なレベルまで落とし込んできた4年間だったと思っています。
2. お客さまとの関係性の変化
もうひとつ、この4年間で手応えを感じているのは、お客さまとの関係の質が変わってきたことです。以前であれば、当社を「金融」「リース」の機能として見られていたお客さまに対しても、今では資金の提供者にとどまらず、経営課題を共有し、一緒に解決に向けて伴走するパートナーとして見ていただけるケースが増えています。その結果、なかなか接点を持てなかった企業のトップとも、直接こうした視点でお話しできる機会が増えてきました。これは単にトップ同士がつながったという話ではありません。トップがつながることで、現場も安心してより早い段階で相談できるようになるのです。「この課題は、まず芙蓉リースに相談しよう」と思っていただける関係が増えている。これは当社にとって非常に大きな意味があります。単発案件ではなく、継続的に価値共創できる顧客基盤が広がっている。私は、この顧客基盤の質的な変化が、将来の収益機会を支える競争優位の源泉になっていくと考えています。こうした関係性の変化の背景にあるのが、この間に実装してきたCSV経営そのものだと私は考えています。
3. CSVは理念であるとともに、収益を生み出す価値創造モデル
私はCSVを、「お客さまの課題を解決することで、信頼を獲得し、社会価値と経済価値を同時に生み出していく経営」だと考えています。大事なのは、社会課題から入るのではなく、お客さまの課題から入ることです。お客さまの経営課題を深く理解し、その解決に向き合う。その結果として信頼関係が深まり、新しい相談や案件がより早いタイミングで入ってくるようになります。ここが重要です。案件の出口だけで勝負すると、どうしても価格競争になりやすい。しかし、信頼関係ができていると、次の相談をより早い段階でいただけるようになります。経営課題として明確に言語化される前の、まだ「何となくもやもやしている段階」で相談をいただければ、私たちは川上からお客さまと一緒にソリューションを考えることができます。そこにはともに解決策をつくり上げる「共創」があります。そこから解決策を形にして成果を出すことができれば、さらに信頼が深まり、そのプロセスを通じて「次も芙蓉リースに相談しよう」という関係ができていく。私は、「課題発掘」「ソリューション提供」「信頼構築」「次の機会の獲得」という循環が回り始めると、CSVは単なる理念ではなく、再現性を持った価値創造モデルになると考えています。こうした取り組みは、財務・非財務の両面に着実に表れてきています。最終年度に向けて財務・非財務の両面で着実な積み上げを進めていきます。特に非財務面では多くの指標で5年間の目標を1年前倒しで達成しました。人的投資を拡大し、脱炭素社会の推進、お客さまの業務量削減といった成果は、CSVの実践が顧客基盤の強化や収益機会の拡大につながりつつあることを示していると考えています。こうした価値創造モデルの有効性は、お客さまを取り巻く環境変化が大きくなるほど、さらに高まっていくと感じています。
4. お客さまの課題が深まるほど、求められる役割も広がる
CSV経営の実装を進める一方で、私たちが向き合うお客さまの課題も、金利、物価、地政学リスクに加え、GX、DX、人手不足など、以前にも増して深く、広く、複雑になっています。だからこそ、私たちに求められる役割も大きくなっています。こうした変化の中で、求められる解決策も金融・リースの機能だけでは完結しません。私は「脱金融・脱リース」という言葉そのものに、強いこだわりはありません。大事なのは、お客さまの課題に最適な答えを出すことです。資金ニーズがあるなら金融機能でしっかり応えればよい。それは当社グループの確かな強みです。一方で、金融・リース機能だけでは解決できない課題が増えているのも事実です。だからこそ、私たちは金融・リースの強みを土台にしながら、その周辺領域へと機能を広げ、課題解決力を高めてきました。今後の成長領域として、私は物流、モビリティ、まちづくりなどに大きな可能性があると考えています。たとえば物流では、グループ会社やパートナーとの連携を通じて、現場のオペレーション課題に入り込む取り組みが広がっています。いずれも社会や産業構造の変化を背景に、お客さまの課題が広がっている領域です。そして当社グループが持つ金融機能、アセットの知見、事業パートナーとのネットワークを組み合わせることで、当社グループの強みを発揮しやすい領域でもあります。単に領域を広げるのではなく、お客さまの課題に対して当社らしい解決策を提供できる領域を見極めながら、成長につなげていきます。お客さまの課題が深く、広くなる中で、当社グループだけでは解決できない領域も増えていきます。私たちは技術の会社ではありませんので、すべての機能を自前で持てるわけではありません。だからこそ重要になるのが、技術や専門性を持つ企業とのアライアンスやM&Aです。相手もまた、自分たちにない機能を当社グループに期待して声をかけてくれる。お互いの強みを持ち寄りながら課題を解決していく。その積み重ねが、結果として社会課題解決にもつながっていくのだと思います。ただ、課題が高度化するほど、解決策を提供する私たち自身にも、より高い専門性が求められます。
お客さま課題解決から始まる「信頼と成長の循環」
CSV経営推進の成果
5. プロフェッショナルでなければ、お客さまの課題は解決できない
再生可能エネルギー事業で昨年度大きな損失を出したことで、新たな事業に進出する際の重要な教訓を得ることができました。経営として、多額の損失による業績への影響を重く受け止めるとともに、新たな成長領域への挑戦にあたっては、必要なプロフェッショナリティーを様々な形で取り込み、確保し、リスク管理の高度化と一体で進めることが不可欠であると改めて認識しました。私たちは、不動産分野をはじめ、プロフェッショナルとして事業に向き合うことで、多岐にわたるリスクを想定しながら案件を検討することができています。コーポレートスローガンである「前例のない場所へ。」をこれからも推進していくにあたり、この、プロフェッショナルの観点をしっかり意識していきたいと思います。こうした取り組みを通じて、当社グループとしてより深い価値提供ができる体制を整えていきます。
6. 人と組織が、価値創造の再現性をつくる
こうした価値創造を支えているのは、結局のところ人です。私は、人的資本こそがCSV経営の価値創造基盤だと考えています。当社では人材投資に力を入れており、中期経営計画では一人当たりの人材育成関連費用を2021年度比300% とすることを目標に掲げ、すでに前倒しで達成しました。この4年間、私が特に力を入れてきたのは、社員が安心して挑戦できる環境づくりです。心理的安全性を確保し、多様な意見を尊重し合う風土を育てることで、新たな気づきや提案が生まれる組織を目指してきました。そして、今はそこからさらに一歩進んで、「考え抜く組織」へと進化しつつあると感じています。私は以前から「壁打ちの達人になってほしい」と繰り返し言ってきました。AIとの壁打ちでも、上司との壁打ちでも、自分自身との壁打ちでもいい。とにかく、考えたことをぶつけ、また考え、もう一段深める。その繰り返しによって、提案や仮説の質は確実に上がります。私は社員に、「AIをどんどん使いなさい。でも最後は自分の頭で考えなさい」と伝えています。お客さまの課題に対して、本当にこの提案でいいのか。なぜこの提案なのか。別の見方はないのか。人との壁打ちでもAIとの壁打ちでもよいのですが、最終的に自分なりの答えを持つことが重要です。お客さまも、「この人は本当に考えてくれている」と感じる。その積み重ねが信頼につながります。また、最近はAIを活用したナレッジ共有も進めています。過去の提案履歴や案件データを分析し、他部署やグループ会社の知見を横断的に活用できるようにしている。以前なら「自分には関係ない」と思っていた情報も、「実は自分のお客さまにつながるかもしれない」と気づけるようになります。私はこれを「自分ごと化」だと思っています。こうした人材力と組織力の強化が、最終的には提案力を高め、案件創出力を高め、当社 グループの成長につながっていくと考えています。
7. 次のステージへ ―信頼を軸に、持続的成長と企業価値向上を実現する
私は、「お客さまから最も信頼される事業パートナー」を目指したいと思っています。そのためには、お客さまの課題に対して、より深く、より広く応えられる存在にならなければなりません。今後は、物流、モビリティ、まちづくりなど、私どもにとって成長余地の大きい領域をしっかり見極めながら、課題解決できる幅を広げていきます。ここで重要なのは、「お客さまの課題を解決する」という軸をぶらさないことです。その積み重ねが、結果として信頼になり、収益になり、さらに新しい成長機会を生み出していく。私は、この循環をさらに強くしていきたいと考えています。同時に、株主・投資家の皆さまに対しては、こうした価値創造の取り組みを、確かな収益成長と資本効率の向上につなげていくことが経営の責任だと考えています。そのため、事業ポートフォリオの見直しや資産の入れ替え、リスク管理の高度化にも継続的に取り組み、持続的な成長と企業価値向上の両立を目指していきます。「お客さまの課題解決を通じて信頼と成長を生み出す」という本質は変わりません。CSV経営の質をさらに高めながら、このサイクルを、さらに高い再現性を持って回せる会社にしていく。それが、次のステージに向かう芙蓉リースグループの意思です。
