社会、株主の皆様、お客様、そして社員からの信頼を獲得し、CSV経営による価値創造を目指します。
社長就任2年目の振り返りと3年目への思い
2023年度は、財務面で順調な成果を挙げていますが、少し詳しく見ると、好調だった不動産部門が全体を支えた面が強く、また非財務面は概ね良好ですが、一部これからという点があると感じています。折り返し点にあたる2024年度は、課題の再確認と明確化を行い、解決に向けてしっかり施策を講じなければなりません。
この2年を振り返ると、一言で言えば「がむしゃらにやってきた」という感じです。社長就任初日に「信頼される企業グループを目指したい」と社内に伝えました。社員一人ひとりへのお客様の信頼の集合が会社への信頼となりますが、私はその先頭にいる人間です。先頭に立っていることを常に意識し、グループ全体がミッションの実現に近づくため具体的に何をすべきか、メッセージを発信し続けました。考え方に共感して動いてくれる人が増えてくれるようにと心を砕いた2年間でした。
拠点を巡り、国内外の社員と対話をしていくと、「チャレンジして社会課題の解決に繋がる提案をしたら、お客様が採用してくれて大変に嬉しかった」といった話を聞くようになりました。その社員は、環境の変化の兆しを捉え、自分の学びを活かした提案をして成功体験を獲得したのです。私たちの目指すビジョンの一つである「社員の挑戦と成長を後押し」が少しずつ実現していると感じます。これを更に広げていきたいと思っています。
2030年のあるべき姿の実現に向けて、競争戦略の更なる差別化を推進
中期経営計画では、事業領域を4象限に区分し戦略分野の選択と集中を図る「ゾーンマネジメント」の考え方に基づき経営資源の投下を行い、グループの持続的成長を図っています。事業部門ごとに、当社グループならではの特徴ある競争戦略を反映させてきました。
成長ドライバーと位置付ける「トランスフォーメーションゾーン」には経営資源を優先的に投下しています。着実に進んでいるのが「エネルギー環境部門」です。欧州を中心に再生可能エネルギー拡大の流れを捉え、投資実績を着実に積み上げており、2030年に向けて更に注力していきます。特徴としては、欧州の大手パートナー企業3社との提携を通じ、当社がファーストコールを受ける関係を築き、共同事業で推進するビジネスモデルを確立したことです。今般設立した英国現法は更に新たな連携を追求します。国内では、電力系統の安定化に寄与する大規模系統用蓄電池事業に取り組むなど、需給調整やエネルギーマネジメント領域への対応も進めます。
事業領域として確立した「BPO/ICT部門」は、他のリース会社にはない特徴ある事業部門です。リース業との親和性のある事業領域であり、お客様からのニーズに従い業容も拡大しています。DX活用によるサービスの質向上と業務処理体制の強化による生産性向上の両面から事業拡大を図り、成長スピードを更に加速させていきます。
「ヘルスケア部門」は、コロナ禍の医療機関等への公的支援もあり、ファイナンスニーズが低下していましたが、ようやく資金需要が復活し始めるとともに、医療・介護の仕事に関わるBPOの話が増加しています。これからの伸長に期待しています。
「ライジングトランスフォーメーションゾーン」においては、「モビリティ物流部門」が海外事業が好調に推移したこともあり、順調に伸長しています。車両領域ではEV普及が依然緩やかですが、既にEVワンストップサービスの体制を整えてきましたから、これからの伸びにはしっかり対応していきます。また、倉庫や冷凍・冷蔵設備、マテリアルハンドリング機器やフォークリフトなど、物流に関わるビジネスを深掘りします。国内にとどまらず、米国西海岸とタイにて事業の拡大を進めます。
「サーキュラーエコノミー部門」では、「芙蓉サーキュラーエコノミーリース」をスタートし、PCは「八王子テクニカルセンター」に、フォークリフトなどは「Fuyoリユースセンター」に還る製品を確実にリユース・リサイクルする体制を推進しています。今後は更に様々なリース資産、例えば太陽光パネルから不動産建物に至るまで、サーキュラーエコノミーという視点でビジネスになるように仕上げていくことがリース業としてのミッションであると考えています。
私たちの祖業はリース・ファイナンスカンパニーであり、新たな事業領域の創出にあたっては、当社グループにないノウハウ・経験を有する企業とのアライアンスにより実現してきました。BPOはその実例ですが、これからも新たな価値創造に積極的に取り組んでいきます。例えば、先日スポーツ・エンターテイメントを活用した新たなまちづくりに着目し、「神戸アリーナプロジェクト」へ参画しました。まちづくりは様々な社会課題解決の集合体であり、私たちなりのCSVが実践できるのではないかと思っています。私たちの金融の力と人と人を繋ぐ力を活用して、新たな事業領域の創出にもチャレンジしていきます。
ゾーンマネジメントの概要
社会課題の解決を軸とする芙蓉リースグループのCSV経営
私が考えるCSV経営とは社会課題の解決の実践です。今や、お客様のニーズの先には必ず社会課題があります。全ての企業がESGやSDGsの観点から社会課題の解決に取り組まなければならない現在、お客様の懐に入ってニーズを把握し適切な解決策を提供すれば、結果としてその先の社会課題解決への貢献に繋がります。ですから、私は殊更に「CSV」を意識することはありません。
当社グループの様々な意思決定においては、それが社会課題の解決に繋がるかどうかという判断軸が入るようになってきています。社員もそうした視点からお客様ニーズにお応えしようという高い意識を持つようになってきました。これを進めることで、私たちの事業の在り方そのものが社会課題の解決に結びつくようになることを目指します。
価値創造のための基盤形成における課題と対応
人的資本に関する具体的な取り組み
私は、芙蓉リースグループの「2030年のありたい姿」を実現するため、価値創造を支える基盤として人的資本とDXの強化が不可欠と考えています。「人こそがもっとも大切な財産」との考え方のもと、人材育成関連費用を中期経営計画5年間に300%に高めると掲げており、社員の研鑽の機会、知見・ノウハウの質は飛躍的に高まると考えています。しかし、一番大事なのは、身に付いたことが実際の仕事で心置きなく発揮される職場環境づくりです。
私が心に決めているのは社員との対話で「しっかり聴く」ということです。人種や性別、障がいのあるなし、年齢に関わりなく様々な人の話を遮らず真剣に最後まで聴き、「なるほど」と頷くことができれば、それは多様性の包摂に繋がるのです。
わからない案件があれば、相手が詳しいのですからまずしっかりと聴きます。話の肝を押さえて頭を整理して、そこから私が「壁打ち」の壁役になります。「では、こう考えるとどうなるのかな?」とボールを返して対話が深まり、互いに共感し納得した結論が出てきます。この過程で社員は成長します。
こうしたやりとりが上司部下の間で行われるような風土づくりを進めています。それによって仕事の質が上がり、大きな価値創造に繋がりますから、結果的に社員の満足感、働き甲斐に繋がります。
DXに関する具体的な取り組み
私たちが推進するDXには、「社内向け」と「お客様向け」の2つのカテゴリーがあります。「社内向け」は業務効率化を進めることですが、同じ悩みを抱えるお客様に対してパッケージ化してBPO各社が提供するのが、「お客様向け」の一つの形です。もう一つは、リース・ファイナンスカンパニーの特徴を活かし、サブスクリプションやリカーリングによりお客様のDX化を支援するサービスです。こうしたプロジェクトでは必ずデータ処理や請求プロセスがあるのですが、支払い、回収、請求代行などのBPOサービスを含めてワンパッケージで提供できるのが、芙蓉リースグループにしかできない強みです。他に真似のできない仕組み、そこに当社グループの価値創造の基盤があると考えています。
ステークホルダーの皆様へ
私たちのミッションである「豊かな社会の実現と持続的な成長に貢献する」の「持続的な成長」とは、社会はもちろん当社グループの双方を含んでいます。持続的成長を実現するためには、当社も順調に利益を上げなければなりません。その利益を配当として還元することで、株主の皆様からの信頼を得ることができます。また、「豊かな社会の実現」に貢献することで世の中の皆様からの信頼を得ることができます。その指標である非財務目標を達成することで、お客様、社員からの信頼も獲得できます。私は、これら3つの信頼を得るとともに、様々なステークホルダーの皆様との共有価値創出に向けた想いを大切にし、ミッションの実現に向かって邁進することこそが、全てのステークホルダーの皆様のご期待にお応えすることだと考えています。今後も引き続き、ステークホルダーの皆様のご理解、ご支援をいただき、これからの芙蓉リースグループにご期待いただきたいと思います。