TCFD提言に基づく情報開示

芙蓉リースグループは、事業を通じた温室効果ガスの削減により、気候変動の緩和に取り組むとともに、気候変動が当社グループの事業環境に及ぼすリスクや機会を踏まえた事業活動を行っています。また、気候変動が当社に与える影響をステークホルダーの皆さまに正しく伝えることの重要性を認識し、2019年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD*1)」の提言に賛同を表明しております。

*1気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)

G20財務大臣・中央銀行総裁会議の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により2015年12月に設立された「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略称。

2017年6月に気候変動が財務にもたらすリスクと機会についての情報開示の枠組みを示した提言書を公表した。

TCFD(TASK FORCE ON CLIMATE-RELATED FINANCIAL DISCLOSURES)

ガバナンス

当社グループの気候変動問題にかかる基本的な考え方を「持続的な価値創造を支える体制にかかる基本方針」に定め、その取組みを推進するため「CSV推進委員会」を設置しています。同委員会は企画・管理部門統轄役員を委員長とし、主要なコーポレート部門および各事業ドメインを管掌する営業部門の部長を構成員として、気候変動問題に関する重要な課題にかかる戦略および指標・目標の策定、推進、モニタリングを行っています。同委員会の審議・報告内容は経営会議に付議され、取締役会に年に1回以上の報告を実施しています。

取締役会は経営会議を監督し、経営会議は取締役会へ年1回以上の報告を行います。経営会議は取締役社長と連携して行います。CSV推進委員会(委員長:企画・管理統括役員)が経営会議に付議し、経営会議ではCSV推進委員会を審議・承認します。CSV推進委員会はCSV推進室(事務局)と連携して行います。CSV推進委員会(委員長:企画・管理統括役員)は各部室店・グループ会社へ取り組み・進捗報告を行い、各事業部・各事業戦略への反映(CSV推進)

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リスク管理

当社グループでは経営上の管理すべきリスクについて、統合リスク管理体制の下で管理を行っております。気候変動リスクはCSV推進室がリスク所管部としてモニタリングし、重要なリスクの発生時には速やかにリスク管理統括部である経営企画部に報告を行い、経営企画部はリスク所管部に対してリスクの管理について適宜指示を行っています。

取締役会は取締役社長を監督し、取締役社長は取締役会へ報告を行います。経営会議は取締社長は審議・報告し、取締役社長は経営会議を審議・承認します。リスク管理統括部は統合リスク報告において各リスク管理状況を報告し、経営会議はリスク管理統括部へ承認します。リスク所管部はリスク管理統括部へリスク管理状況を適宜報告し、リスク管理統括部はリスク所感部へリスク管理について適宜指示を行う。各部室店・グループ会社はリスク所感部へリスク状況を報告し、各部室店・グループ会社は連携・指示

戦略

気候変動の深刻化に伴い各国で温室効果ガス削減の取り組みが進む中、社会全体の脱炭素化に向けて、事業環境は急速に変化しています。芙蓉リースグループは、シナリオ分析を基にリスクと機会を特定し、リスク軽減としての「自社グループの脱炭素化」、事業機会としての「お客様・社会の脱炭素化」を両輪とした脱炭素戦略を推進しています。
芙蓉リースグループの脱炭素戦略及び取り組みの詳細は、「気候変動への対応」を参照ください。

気候関連シナリオ分析

当社グループは、将来の気候変動が事業活動に与えるリスクと機会、財務影響を把握するため、TCFD*1が提唱するフレームワークに則り、シナリオ分析の手法を用いて、2030年時点における外部環境変化を予測し分析を実施しています。分析にあたっては、様々な気候変動関連シナリオに基づく検討とすべく、パリ協定の目標である「2℃より十分に低い」に則した「1.5℃シナリオ」と「4℃シナリオ」の2つの気候変動シナリオを基に分析を実施しています。

世界の平均気温の変化

十分な温暖化対策がとられず、平均気温が4℃上昇するシナリオと抜本的なシステム移行により気温上昇を1.5℃未満に抑えられるシナリオ(当社グループはめざす世界)のグラフ表

出典:IPCC AR5 WG1 を基に当社作成

気候変動の影響度と当社事業の相関図

不動産、モビリティ、航空機、エネルギー環境の財務影響(資産残高)と気候変動影響(リスクと機会)の度合いについては次の通りである。財務影響(資産残高)が1番高く、気候変動影響(リスクと機会)が1番低いのは不動産である。財務影響(資産残高)が2番目に高く、気候変動影響(リスクと機会)が3番目に低いのはモビリティである。財務影響(資産残高)が3番目に高く、気候変動影響(リスクと機会)が2番目に低いのは航空機である。財務影響(資産残高)が4番目に高く、気候変動影響(リスクと機会)が4番目に低いのはエネルギー環境である。

気候変動に係るリスクと機会

主な気候変動リスク*2

全社的な気候変動リスクとして、炭素税の導入によりRE100およびカーボンニュートラル実現を目指す為のコストが増加するリスクが特定されました。ただし、当社グループのCO₂排出量を基に影響額を算定した結果、財務面に与える影響は軽微であると認識しています。

その他、特に気候変動影響が大きいと想定されるドメインにおけるリスクは以下の通りです。

項目

事業への影響

概要

時間軸

シナリオ別影響度

1.5℃

4℃

全社

移行リスク

炭素税の導入(政策・法規制)

炭素税が導入されることで、RE100・カーボンニュートラル実現に向けたコストが増加するリスク

中期~長期

不動産

移行リスク

顧客嗜好変化による競争力低下(市場)

不動産ファイナンス取引等で投資先の物件に環境対応の遅れがあった場合に、収益性や借入人の信用力が低下するリスク

中期~長期

物理的リスク

自然災害の激甚化(急性)

自然災害の増加・激甚化に伴う保険料の上昇リスク

短期~長期

エネルギー環境

移行リスク

エネルギー買取制度(FIT・FIP)等の制度変更(政策・法規制)

想定し得ない制度変更が発生した場合、売電収入減少・運営コストの増加等のリスク

短期~長期

再生可能エネルギー発電事業における事業環境の変化(市場)

出力抑制による売電収入減少のリスク

中期~長期

物理的リスク

自然災害の激甚化(急性)

自然災害の増加・激甚化に伴う保険料の上昇リスク

短期~長期

モビリティ

移行リスク

CO₂排出量に関する規制の強化(政策・法規制)

CO₂排出量に関する規制強化等によりガソリン車の需要が低下し、従来のディーゼル・ガソリン車のリース需要が減少するリスク

中期~長期

小~中

事業環境の変化(市場)

EVへのシフトに伴うガソリン車の再販売価格の下落リスク

中期~長期

メンテナンス収益の減少(技術)

EVへのシフトに伴うメンテナンス関連の売上・収益の減少リスク

長期

航空機

移行リスク

法規制強化に伴う航空機需要の減少(政策・法規制)

CO₂排出量に関する規制強化等により航空機の需要が低下し、リース収益が減少するリスク

中期~長期

事業環境の変化(市場)

低燃費航空機へのシフトに伴い、リース期間終了後の旧型モデル航空機の再販売価格の下落による収益減少リスク

中期~長期

時間軸の定義

「短期」:現在~2025年、「中期」:2026~2030年、「長期」:2031年~2050年

影響度の定義(2030年の連結売上総利益に対する影響額)

「大」:30億円超 「中」:1~30億円 「小」:1億円未満

  • *2
    1.5℃シナリオの分析にあたり、外部情報が不足している項目については一部2℃シナリオのデータを使用しています。

気候変動に係る主な機会*3

当社グループでは気候変動問題の解決を通じた社会価値の創造を重要なビジネス機会と位置付け、中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」において社会が1.5℃の世界を目指すことを想定し戦略を策定しました。その中でも当社グループが特に積極的に取り組む項目を機会として開示しています。

項目

事業への影響

概要

時間軸

シナリオ別影響度

1.5℃

4℃

エネルギー環境

機会

再生可能エネルギー需要の増加(製品・サービス、市場)

国内の再生可能エネルギー事業への取り組み増

短期~長期

海外の再生可能エネルギー事業への取り組み増

短期~長期

新技術・新制度等による事業機会(製品・サービス、市場)

二次エネルギー等の新規ビジネス分野への取り組み増

短期~長期

モビリティ

機会

電気自動車の需要増加(市場)

  • EVワンストップサービスの推進
  • 自動車メーカーやディーラー連携、電力会社、商社等とのアライアンス戦略推進
  • メンテネット構築
  • FCVを他社に先駆けて推進

短期~長期

電気自動車関連サービスの需要増加(製品・サービス)

航空機

機会

航空機関連の新技術の導入・新たなマーケットの形成(製品・サービス)

  • 周辺事業者への出資・協業、シナジーによる既存プロダクトの引合獲得・採算性向上
  • 新技術分野(SAF(持続可能な航空燃料)・水素・電動・eVTOL(電動垂直離着陸機)等)へのベンチャー出資、協業等

中期~長期

時間軸の定義

「短期」:現在~2025年、「中期」:2026~2030年、「長期」:2031年~2050年

影響度の定義(2030年の連結売上総利益に対する影響額)

「大」:30億円超 「中」:1~30億円 「小」:1億円未満

  • *3
    1.5℃シナリオの分析にあたり、外部情報が不足している項目については一部2℃シナリオのデータを使用しています。

当社グループ事業への影響

1.5℃/4℃シナリオのいずれにおいても、当社グループの事業に対する気候変動リスクの影響は限定的であり、機会の方が大きいという分析となりました。また、双方のシナリオにおいて連結売上総利益の増加が見込まれるものの、1.5℃シナリオの方がより利益の増加余地が大きいということが分かりました。

1.5℃の世界観

1,5℃シナリオ世界観@2030年 自然環境について自然災害の激甚化は一定程度進行するが抑制する。それに伴い政府・法規制が脱炭素に向けた政策・法規制の導入を行い、社会・顧客は社会全体で脱炭素化を推進する。それらがFUYO LEASE GROUPの不動産・モビリティ(EV・関連インフラの普及(+)、新規サービスの提供機会増加(+))・エネルギー/環境(再エネが主力電源化(+)、コーポレートPPA等の需要増加(+))・航空機(新技術の導入・新たなマーケットの形成(+))によってドメインの垣根を超えた脱炭素ビジネス推進・シナジー効果の発揮、RE100・カーボンニュートラル実現に向けた取り組みに対する評価が行われる

4℃の世界観

4℃シナリオ世界観@2030年 自然環境について平均気温の上昇・風水害の激甚化。それに伴い政府・法規制に大きな変化もなく、社会・顧客は従来型の消費・経済活動をする。それらがFUYO LEASE GROUPの不動産(自然災害の増加に伴い保険料が上昇(-))・モビリティ(EV・関連インフラの普及は限定的(-)、新規サービスの提供機会も増加せず(-))・エネルギー/環境(火力発電が主力であり再エネ電源の拡大は限定的(-)所有・出資する再エネ発電所の被災リスク・保険料が上昇(-))・航空機(航空機需要はより旺盛(+)新技術の導入は限定的(-))によって脱炭素ビジネスは停滞、RE100・カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが評価されない可能性がある

指標と目標

当社グループは、気候変動に伴うリスクと機会が当社グループの事業活動に大きな影響を及ぼすことを認識し、当社グループの脱炭素の推進、および事業を通じたお客さま・社会の脱炭素の推進の両面から積極的に対応しています。

当社グループの脱炭素推進の観点からは、2018年に国内の総合リース会社として初めて「RE100」に参加し、消費電力の再エネ化への取り組みを開始するとともに、2021年にはカーボンニュートラルを2030年に達成することを宣言し推進しています。

また、広範な事業領域や顧客基盤を有する当社グループとして、ビジネスを通じてお客さまそして社会全体の脱炭素化に貢献することが重要な課題と考え、「脱炭素社会の実現」をマテリアリティ(重要な取り組み課題)の一つに掲げ、お客様の再エネ・省エネ設備・機器等の導入・置換による「CO₂削減貢献量」等の非財務目標を策定しています。再生可能エネルギー発電事業の拡大や、EV・FCVへのファイナンスの強化等を通じてお客様や社会の脱炭素化を推進し、同時に利益の獲得を図ります。

リスク軽減としての「自社グループの脱炭素化」、事業機会としての「お客様・社会の脱炭素化」それぞれに対して、指標と目標を策定しています。

気候変動に係るリスクと機会について、リスク低減としての「自社グループの脱炭素化」と事業機会の獲得としての「お客様・社会の脱炭素化」を両輪として取り組んでいる。

リスクにかかる指標と目標:当社グループの脱炭素化

2030年度目標

2024年度目標

2022年度実績

RE100目標*4

再生可能エネルギー使用率100%

再生可能エネルギー使用率50%

再生可能エネルギー使用率39%

CO₂排出量*4(スコープ1,2)

カーボンニュートラル達成

2020年度比30%削減

2020年度比15%削減

排出量1,715t-CO₂

  • *4
    対象はともに芙蓉総合リースおよび連結子会社

機会にかかる指標と目標:お客さま・社会の脱炭素化

2026年度目標

2022年度実績

CO₂の削減貢献

50万t-CO₂/年

22万t-CO₂

脱炭素推進に向けた資金投下額*5

3,000億円

564億円

再エネ発電容量*6

1,000MW

515MW

保有台数におけるEV・FCV比率*7

30%

0.70%

脱炭素推進ファイナンスの取扱金額*8

120億円

53億円

  • *5
    対象は、再エネ設備、省エネ設備、電動車(充電設備含む)、水素・アンモニア関連設備、CO₂分離・回収技術(CCUS、DAC)、サーキュラー関連設備、ZEB・グリーンビル、SAF、ベンチャー企業への投資等。
  • *6
    再生可能エネルギー発電事業に対する出資及びプロジェクトファイナンス等が対象(発電容量は持分比率・シェアに応じて算出)。
  • *7
    芙蓉オートリースにおける保有台数。
  • *8
    「芙蓉 ゼロカーボンシティ・サポートプログラム」「芙蓉 再エネ100宣言・サポートプログラム」が対象。

ご参考:環境関連データ

過去10年間における当社グループのCO₂排出量およびその他の主要な環境関連データは以下の通りです。

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2020

2021

2022

CO₂排出量 (t-CO₂)*9*10

Scope1

192

159

153

163

770

707

688

603

584

558

Scope2

956

1,110

1,045

1,089

1,273

1,197

1,283

1,414

872

1,157

Scope1+2

1,148

1,269

1,199

1,253

2,043

1,904

1,971

2,016

1,455

1,715

Scope3*11

1,246,345

1,243,298

1,420,896

1,639,334

1,768,197

2,789,556

2,866,387

2,372,283

2,471,642

2,149,492

CO₂排出量原単位(Scope1, 2)(t-CO₂/億円)

0.31

0.33

0.30

0.32

0.36

0.36

0.29

0.28

0.22

0.25

再生可能エネルギー発電容量(MW)*12

23

48

77

86

111

149

229

283

318

515

再生可能エネルギー発電事業によるCO₂削減貢献量(t-CO₂)

8,910

22,236

39,636

54,115

48,258

69,514

85,577

147,574

153,442

210,782

その他事業によるCO₂削減貢献量(t-CO₂)

-

-

-

-

-

-

-

-

-

9,373

  • *9
    一部拠点については電力使用量を推計しています。推計方法は、推計対象拠点の面積に、芙蓉リース本社もしくは対象拠点の建屋全体もしくは対象拠点の本社における面積当たりの電力使用量を乗じる方法を採用しています。
  • *10
    CO₂排出量(スコープ1、2)は、「特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令」の排出係数を用いて算定しています(電気については、算定対象の事業所・オフィスが所在する地域において電力供給を行っている一般送配電事業者の各年度の調整後排出係数を用いて算定。海外の電気については、国際エネルギー機関(IEA)の公表する国別排出係数を用いて算定)。対象範囲は芙蓉総合リースおよび連結子会社です。なお、海外現地法人およびグループ会社については集計開始以前の値は表示していません。
  • *11
    CO₂排出量(スコープ3)は、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(環境省、経済産業省)」に基づき算定しています。
    2017年度分までは、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.2.6)」の原単位を用いて算定しています。
    2018年度分より、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.0)」及び「LCIデータベースIDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定⽤)」の原単位を用いて算定しています。
    2021年度分より、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.2)」及び「LCIデータベースIDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定⽤)」の原単位を用いて算定しています。
    2022年度分より、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.3)」及び「LCIデータベースIDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定⽤)」の原単位を用いて算定しています。
    対象範囲は芙蓉リースグループ、算定対象カテゴリーは全15カテゴリーとなっています。
  • *12
    再生可能エネルギー発電事業に対する出資及びプロジェクトファイナンス等が対象(発電容量は投資持分比率・シェアに応じて算出)。2021年度分より開発中案件を含む数値に変更しています。

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